℃-ute七姉妹物語シーズン3

11号2010/03/10(水) 01:07:13ID:1aX1ixKj0
もしも℃-uteの七人が姉妹だったら?を妄想するドラマ小説スレ。

前スレ
℃-ute七姉妹物語・シーズン2
http://c.2ch.net/test/-/ainotane/1190029714/

前々スレ
℃-ute七姉妹物語
http://tv11.2ch.net/test/read.cgi/ainotane/1179850910/

℃-ute七姉妹物語ログ保管庫
http://cute7sisters.web.fc2.com/index.html

※サイバーテロによって志半ばにして逝った前スレ
℃-ute七姉妹物語シーズン3
http://dubai.2ch.net/test/read.cgi/ainotane/1255008481/

229愛理の休日 182015/03/11(水) 22:05:58.21ID:CDoEnh/q0
早貴と千聖が、「何、なに……!?」と立ち上がり、音のした方へと慌てて走っていった。
愛理は……。


「ちょっと舞美ちゃん、何やってんの!」

駆けつけた舞美の部屋で、早貴が声を上げた。千聖が「あー……」とあきれた顔を見せた。
床には、割れた花瓶のガラス片が散らばっていた。

「ごめーん、台詞を覚えるのに動きも付けてたら、本格的にやりたくなっちゃって、つい……」

舞美の手には、かつて舞台で使用した竹光が握られていた。

「もう、刀振るときは、部屋の中でやらないで、外でやってって前から言ってたでしょ!」

早貴が叱ると、

「……うん、ごめんなさぁい」

舞美は、竹光を持っていない方の手で頭を撫でながら、子供のように素直に謝った。
そのいじらしい姿に、早貴の表情は我が子を見つめる保護者のように自然と緩み、

「ああ、舞美ちゃん危ないから動かないで。今、ほうきとチリトリ持ってくるから」
「はーい」
「あ、細かい破片が飛び散ってるかもしれないから、掃除機も」

千聖も言うと、舞美と一緒に、三人で手分けをして、割れた花瓶の破片を綺麗に片付けた。

「もう、舞美ちゃんまた部屋で刀振って花瓶割っちゃったよ。……あれ、愛理?」

早貴と千聖が、リビングダイニングへ戻ってきたとき、愛理の姿がどこにも見当たらなかった。

230愛理の休日 192015/03/11(水) 22:08:34.98ID:CDoEnh/q0
「……愛理ー?」

早貴が呼ぶと、リビングからガタンと音がした。早貴と千聖がそちらの方を向くと、
さっきまでアルバムを探していた収納の隙間に無理やり身を潜めていた愛理が、
扉の間から頭だけを外へ覗かせて、

「……舞美ちゃんが、花瓶?」

怖々とした表情を浮かべながら訊いた。

「そうだよ。だけど愛理、どうしたのそんな所で!?」
「……何でもない、急に大きな音がして、ちょっとびっくりしただけだから」

愛理は、早貴に血の気が引いたであろう青白い顔で答えた。

「ねえ愛理、その顔、本当に大丈夫なの?」
「うん。ごめんごめん、全然、大丈夫だから」

そう言って、愛理は無理やり、ぎこちない笑顔を浮かべてみせた。
そんな、二人のやりとりを黙って聞いていた千聖が、

「……もう、大丈夫な訳ないじゃん。理由、知ってるんだから!」

痺れを切らせたように言うと、テーブル上のパソコンに手を伸ばした。

「あ、ばか千聖!」

早貴が慌てて止めようとしたが、千聖の手は止まらなかった。
インターネットブラウザで、素早く検索をして、画面にあるサイトを表示させる。

「ほら、これだろ?」

231愛理の休日 202015/03/11(水) 22:11:03.77ID:CDoEnh/q0
沢山の画像が並んだ、そのサイトを表示させたディスプレイを愛理の方に向けて、
千聖は言葉の尻に怒気を含ませた荒い口調で言い放った。

「愛理のストーカー写真、また増えてるんだから!」

愛理がしゃがんでいたリビングから、テーブル上のパソコン画面はよく確認できなくても、
そこに何が写っているのか、愛理にはもうわかっていた。
そこに表示されているのは、以前に撮られたのとは別の、休日に出掛けた先で隠し撮りされた、私服姿の自分。
登下校の途中であろう、通学路で撮られた制服姿の自分。
そして、自宅の玄関前で、扉を開いて出掛けようとしている自分――。
それは、自宅をすでに知られているということで、その事こそ愛理が、何よりも怖いと思っていることだった。


リビングでは落ち着かないだろうという早貴の配慮で、三人はノートパソコンを持って早貴の部屋へ移動した。

「愛理、この方がいいんでしょ?」

早貴が、部屋のカーテンを閉めてから、床に敷かれたカーペットに腰を下ろした。

「うん。ごめんね、なっきぃ」

愛理と千聖は、ノートパソコンを小さなテーブルの上に置いて、やはり床にペタンと座りこんでいる。

「……愛理、自分の部屋だって、もうずっとカーテン閉めっぱなしなんでしょ?」

早貴が、心配そうに訊くと、

「うん。何か、常に見られてるみたいな気がして、落ち着かなくて……。
でも、リビングは昼間からカーテン閉め切る訳にもいかなかったしね……」

愛理が答えた。

232ねぇ、名乗って2015/03/12(木) 06:24:49.74ID:8qgGV7de0
何となく覗いたら更新されてたーーーーー
嬉しすぎる!

233ねぇ、名乗って2015/03/12(木) 22:08:38.63ID:0PCTFRH90
ごめんなさい
読み返す度に「下手だなあ」ってゲンナリしてたんだけど
しょせん素人なんで上手く書こうなんて気にしないで開き直ることにしました

あと、書くのが遅れに遅れて、作中の愛理は設定上まだ高校生です
昔の話だと思って読んでて下さい

234愛理の休日 212015/03/12(木) 22:09:41.99ID:0PCTFRH90
ストーカーがいて、常に盗撮されていることは、舞美には内緒にしているので、
休日の昼間にリビングのカーテンを閉める、舞美を納得させられる理由を、愛理は見つけられなかった。

「……やっぱりさあ、舞美ちゃんにも言っておいた方がいいよ。何にも言わないで、
 愛理がそんな怯えた表情してたら、舞美ちゃん余計に心配するかもしれないよ?」

早貴が言った。

「うん……でも」

愛理が答える。

「舞美ちゃんあの通り、一つのことに集中しちゃうと、他のことに頭がいかなくなるじゃない?
 あたしがストーカーの盗撮に悩まされてるって知って、もしも『見張ってそいつを捕まえてやる!』
 なんて考えちゃったら、きっと台詞覚えどころじゃなくなっちゃうよ。
 大事な主演映画のクランクイン前なのにさ……」

もっともだ、というように、早貴も黙り込む。

「……でも愛理さあ、何で盗撮されてる写真が増えてるの知ってたのさ?
 ウチらは、気付いても教えなかったのに」

テーブル上のパソコンをいじっていた千聖が訊いた。

「……あたしのブログのコメント欄が何か荒れてたから、検索して調べてみたの。そしたら、
 ああこれが原因だなって」

愛理は、千聖が触っていたマウスを受け取ると、画面をスクロールさせて、一枚の画像を表示させた。
放課後の帰り道、あるいは、朝の登校風景なのかもしれない。
制服を着た愛理の隣に、同じ高校の制服を着た男子が並んで写っている写真。

235愛理の休日 222015/03/12(木) 22:11:32.72ID:0PCTFRH90
写真では愛理が、男の子の方を向き、とても楽しそうな笑顔を見せている。
斜め前方から撮られているので、二人の位置が少し重なり、とても距離が近いように見える。
まるで、仲の良いカップルの通学風景の様だ。

「あー…、よりによって、これ見つけちゃったんだ」

早貴が、困ったような表情で言った。

「うん、『愛理に恋人発覚ーーー!!』って愉しそうな書き込みと一緒に、さ」

愛理が、早貴に輪を掛けたような困り顔で言った。

「でも、恋人発覚なんて、そんな嘘を書いて何が愉しいんだろうね」

愛理がポツリと言うと、

「え、違うの?」

早貴が訊き、

「違うよ!」

慌てて答える愛理に、千聖が「……なあんだ」と、横を向いてちょっとつまらなそうな顔をした。

「……とにかく、同じクラスの子だし、友達ではあるけど、二人きりになったことなんて一度もないよ。
 多分、みんなで一緒にいる所を撮って、周りを切り抜いたんだよ」
「でもさ、ストーカーして写真を撮るような人なんて、愛理のファンなんじゃないの?なのに、
 どうしてそんな嘘書くんだろうね?」

早貴が、素直に思った疑問を口にした。

236愛理の休日 232015/03/12(木) 22:21:35.48ID:0PCTFRH90
「きっと、いろいろあるんだよ。違うアイドルのファンとかで、
 あたしの人気を落とせばその娘の人気が上がるって思ってたりとかさ……」

愛理が言った。
たしかに、アイドルがプライベートの写真を狙って撮られることは珍しいことではないと思う。
やはりアイドルである友達からも、よく聞く話だった。

しかし、そこに“悪意”を感じると話は別だ。
わざと、カップルに見えるように周りを切ってトリミングするという行為と、
その画像に添えられた『恋人発覚!』なんていう嘘のコメントから、
愛理が感じたのは間違いなく“悪意”だった。

そして、そんな“自分のことを良く思っていないストーカー”に、
自宅(それも、家族の中に男性がいない女所帯)を知られているというのは、
思っていた以上の恐怖で、愛理の大きなストレスになっていた。

「でも、こんなページまであるんだねー」

愛理は、興味深げにマウスで画面を上下にスクロールさせてみて言った。
これは、以前に愛理が写真を見つけたサイトとは別で、
これまでネットにアップされていた愛理の盗撮写真をわざわざ一つにまとめてくれているサイトらしかった。

掲載されている画像の下には、コメントを書き込める掲示板が付いている。
自分について、何かが書かれている場所を、このとき愛理は無視できなかった。
(怖いもの見たさ)の気持ちもあり、恐る恐る、その掲示板を眺めてみた愛理の目に飛び込んできたのは、
ファンを裏切ったという自分への誹謗や中傷だった。

「……あはは、あたしのブログのコメント欄なんて可愛いもんだったんだね」

強がり、笑顔を作ってみたが、次々に画面を下へスクロールさせて、
自分への口汚い罵倒や悪意に溢れた文章を読んでいるうちに、次第に目頭が滲んくるのがわった。

237ねぇ、名乗って2015/03/12(木) 22:30:57.92ID:0PCTFRH90
ミス一つ

×自分への口汚い罵倒や悪意に溢れた文章を読んでいるうちに、次第に目頭が滲んくるのがわった。

○自分への口汚い罵倒や悪意に溢れた文章を読んでいるうちに、次第に目頭が滲んくるのがわかった。

ですね
ではまた明後日あたりに

238ねぇ、名乗って2015/03/14(土) 21:39:24.33ID:CkzNs1pB0
専ブラ終了する前に完結させてしまいたかったな
もし次作をやるならOPENかNEXT移住を考えてます

239愛理の休日 242015/03/14(土) 21:40:09.70ID:CkzNs1pB0
「叩かれるのってさ、思ったより堪えるものなんだね……」

涙をこぼすのは、こらえることができた。
身に覚えのないことなのに、どんな言葉で叩かれても泣いたりするものかという意地もあった。
しかし、代わりに口からは本音がこぼれてしまっていた。

「愛理、有名人が自分に関するそんな書き込み読んじゃだめだって!!」

愛理の、表情の変化に気が付いた早貴が、マウスを動かす愛理の手を止めようとした。

「……ううん、でも、中には応援してくれてる書き込みもあるから」

自分を罵倒する汚い言葉の数々の中にも、ときどき擁護の書き込みを見つけることができる。
それが、愛理が画面のスクロールを止められない理由だった。

書き込みされた時間を見ると、ちょうど昨晩にも、自分をののしる人達に対抗して、
ずっと擁護の書き込みをしてくれてる人がいた。
ネット掲示板の中で始まる、互いの書き込みによる激しいバトル。愛理は、そのやり取りを、
書き込み時間に沿って目で追っていく。
それは、夜中までずっと続いていたようで、最後に、

「お前らに、愛理の何がわかるんだよ!」

という力強い一文が、目に飛び込んできた。
(本当のわたしのを知らないのは、あなたもでしょ?)と心の中でツッコミを入れる。
しかし、誰だかわからないが、頼もしい、味方はいると思えた。それだけで、愛理は少し安心できた。

「もうさ、千聖たちでこいつ捕まえちゃおうよ!」

突然、語気荒く、千聖が言った。

240愛理の休日 252015/03/17(火) 22:23:52.21ID:w8+gLQKd0
「でも、どうやって?」

早貴が訊いた。

「……だって、この写真を見たらさ」

千聖が愛理の手からマウスを取ると、愛理が玄関前で撮られた写真へと画面を戻して言った。

「こいつ、もう愛理のスケジュールも、家の場所も調べて知ってるってことじゃん。
 だから今日も、もしかしたら外で見張ってるかもしれないし。
 だったら、今から外に出てみて怪しい奴を捕まえればいいんだよ!」

そう言って、今すぐにも外へ飛び出していきそうな千聖を、

「そんな、止めなよ千聖!」

早貴が慌てて制止した。

「怪しい奴を捕まえるって、どんな人かもわからないのに、無茶だって!」
「そんなの、ただカメラ持ってる奴がいたら捕まえればいいだけじゃん!」
「……そういう意味じゃなくて、どんな相手かわからないから、危ないし怖いよって言ってるの!」
「何だよ、またそのヘタレ癖エ!そんなの、愛理がこんなに怯えてるのに比べたらさ……」
「……いいって千聖」

愛理が、すっかりヒートアップしてしまった千聖の勢いを諌めるように、静かに口を開いた。

「あたしは、もう諦めてるから」
「え?」
「どうせ、このお仕事してる以上、もうプライバシーなんて無いと思ってるし……」
「何だよ、それ……」

241愛理の休日 262015/03/19(木) 19:43:37.06ID:z6ljxh++0
それまで憤っていた千聖の表情が、一瞬、静まり真顔になった。
怒りが消えたのでは無い。怒りの矛先が、変わった瞬間――。

「どうせ……って、愛理、そんなんでいいのかよ!?ずっとストーカーされて盗撮されて、
 せっかくの休みにも家から出られなくなって、ビクビクしてる生活なんか!」

千聖の激情は、愛理へ向かって放たれた。

「だって、仕方ないじゃん!千聖も、さっきの掲示板読んで知ってるでしょ?
 あたしの事をキライな人なんか、いっぱいいるって。
 今のお仕事してるうちわ、人からどう見られて、どんな風に思われるかなんて、
 自分ではどうしようもないんだから!」
「それは……」

言葉に詰まってしまった千聖に代わり、

「……そう言えば、愛理、前にも言ってたよね」

早貴が、口を開いた。

「愛理の友達に、やっぱりストーカーに狙われて、
 プライベートを写真に撮られてたアイドルの子がいるって」
「うん」
「その友達、どうなったか知ってるよ。
 たしか、ストーカーに耐えられなくなって、芸能界自体を辞めちゃったんでしょ?」
「……うん」

愛理が、小さく頷いた。

「きっと、それが正解なんだよ。……ストーカーとか、誰かに付きまとわれるのが嫌なら、
 アイドルなんてもう辞めるしかないのかも」

242ねぇ、名乗って2015/03/19(木) 19:49:12.24ID:z6ljxh++0
ものすごく単純なミスがある

×今のお仕事してるうちわ
○今のお仕事してるうちは

ですね
#35くらいで終わる予定、ここからラストまでは書くのが楽しみなのでもう放置はしません
ではまた書けたら

243愛理の休日 272015/03/21(土) 20:53:14.91ID:h75PL5Os0
その、愛理の口から出た言葉に、早貴は何かを考えるように黙り込み、少しの沈黙の後に言った。

「ねえ愛理、もしかしてだけどさ……」
「……何?」
「愛理、今のお仕事、もう辞めたいって思ってる?」
「え……!?」

突然だった早貴の問いに、愛理がすぐには答えられないでいると、

「……何だよ!?」

千聖が、怒りの声を上げた。

「ずっと夢だって言って頑張ってきたくせに、ストーカーに写真撮られたぐらいで、
 もう辞めたいって思ってるのかよ!」
「待ってよ千聖、あたしは……」
「ずっとレッスン通って、下積みだって続けてやっとデビューしたのに、
 何でそんな簡単に辞められるんだよ!?」

愛理に話す余裕を与えず、千聖が次々と言葉を捲し立てる。

「そうか、きっと愛理は簡単に手に入れたから、
 そうやって簡単に捨てられるんだよ」
「何、それ、どういう意味……」

それまで、千聖の勢いに困惑していた愛理の表情が、少し強張った。

「オーディションも一発OKだったしさ。……やっぱ可愛くて、才能もある人は違うよ!」
「千聖、言い過ぎッ!!」

愛理より先に、早貴が怒った。
しかし、千聖の口は止まらなかった。

244愛理の休日 282015/03/24(火) 20:24:58.17ID:PkVF+Wyr0
「そんなに嫌なら、もう、とっととアイドルなんて辞めちゃえよ!!」
「あたしは、……歌手にはなりたいと思ってたけど、
 別にアイドルになりたかった訳じゃないもん!!」

愛理の目に、瞬間的に大量の涙が浮かんだ。今度はそれを我慢する事もなく、
涙は頬を伝いこぼれ落ちていった。怒りと悲しみが、ない交ぜになった感情の中で、
しかし愛理は、その潤んだ瞳に(負けるか!)という強い意思を込めて、キッと千聖を睨み返す。

すると、滲んだ視線の先にいる千聖も、その目に涙を浮かべているのがわかった。
もう、何だよ……と愛理は心の中で首を傾げる。
ここまで言われた自分が泣くのは当然だと思うが、千聖が泣くのは意味がわからないぞ。

千聖は、何を考えているのだろう。
ほんの少しの間、無言で睨みあった後、愛理が「それに……」千聖が「だって……」と、
互いに何かを言いかけたときに、早貴の部屋に、舞美の大声と、同時に大きな物音が聴こえてきた。

「ねえ、舞美ちゃんまた……!?」

早貴が、千聖の方を向いて言った。
しかし、舞美の声には、さっきの悲鳴とは違う勇猛な響きがあり、
何かを叩いたような大きな音の後には、バタバタとした激しい物音が続いた。
何やら、ただ事ではない感じ、明らかな異常事態を感じさせた。

早貴と千聖は慌てて立ち上がり、ドアを開けて、音が聴こえた方へと向かっていった。
気持ちが高ぶっていた愛理も、今度は怯えることなく、二人の後に付いて部屋を出た。


三人が来たのはリビングだった。大きなガラス戸の向こう、庭先に舞美が立っているのが見えた。
ガラス戸を開け、サンダルを履くと、三人は舞美の側まで駆け寄った。

「どうしたの舞美ちゃん!?」

245愛理の休日 292015/03/24(火) 20:27:26.40ID:PkVF+Wyr0
早貴が訊いた。
舞美は、右手に竹光を握り、左手にはカメラを持って、困った表情で佇んでいた。

「……さっき、なっきぃに叱られたじゃん。『刀を振るなら、外でやって』って。
 だから庭で、動きを付けながら台詞の練習しようと思ったの」

舞美は、そう言って竹光を持った右手に視線を向けた。

「そしたら、塀の向こうでガタンって音がして、誰かが立ち上がって慌てて逃げていこうとしたの。
 ……集中して役に入ってたから、つい反射的に刀を振り下ろしちゃって」
「……あ!」

愛理は、舞美が演じる役柄と、昼間にキッチンで舞美に叩かれそうになった時の台詞を思い出した。
『警察だ。貴様、そこを動くな!』って――。

「そしたら、その人の頭に当たっちゃったみたいで、塀の外に出てみたら、このカメラが落ちてて……」

舞美が、今度は左手のカメラを掲げて言った。

「だから謝ろうとしたのに、凄い勢いで走って行っちゃって」
「その人は……どんな人だった?」

愛理が訊いた。

「ちょっと肥った……おじさんだったよ」

早貴と千聖が、お互いに顔を見合わせて、プッと吹き出した。

「ねえ、どうしよう、あたし人を叩いちゃったよ……」
「ううん、いいの舞美ちゃん!」

早貴が、今にも泣き出しそうな表情の舞美を、安心をさせるように笑顔で見上げて言った。

246愛理の休日 302015/04/01(水) 19:35:13.99ID:V1H01LYV0
「……愛理も、よかったじゃん」

千聖が、チラと愛理の方を向いて、ちょっぴり照れくさそうに言った。

「……ううん」
「え?」
「例え、今の人がストーカーを止めても、きっとまた違う人が出てくる。
 アイドルなんてやってる以上は、多分、キリがないんだよ」
「そんな、愛理……」

早貴が、笑顔だった表情を曇らせて愛理を見つめた。

「でも、さ……」

愛理は、舞美へと視線を向けると、

「……おかげで、スカーッとしたよ。ありがとう舞美ちゃん!!」

その表情から、それまで貼り付いていた憂いが消えて、一転して、
弾けるような笑顔で、勢いよく舞美に飛びついた。

「え、ちょっと、愛理!?」

まだ、事態を飲み込めていなくて戸惑う舞美を、
愛理は気にすることなく、正面から力強く抱き締めた。
早貴と千聖が、そんな愛理を見て、再び安堵の笑みを浮かべた。

「ねえ、愛理?いったい何が……」
「ううん、もう大丈夫だから」

247愛理の休日 312015/04/01(水) 19:36:09.09ID:V1H01LYV0
愛理は、ほっとしたように微笑むと、舞美から体を離して、

「……舞美ちゃん、それ貸して」

舞美の左手からカメラを受け取った。

(これが、あたしをずっと苦しめていたカメラかあ……)

それを見た愛理の中に、あらためて怒りが沸き上がってきた。
両手で抱えたカメラを胸の前で一瞥したあと、視線を落として、“固い場所”を探した。
リビングと庭を繋ぐ足場として置かれた、平たい沓脱ぎ石が目に入った。

「……こんなもの!」

怒りにまかせて、その沓脱ぎ石にカメラを叩きつけようと、
愛理は、両手を頭上高くに振り上げた。

「あ、愛理!」

早貴と千聖が、驚き声を上げた。

(でも……!)

愛理は、破壊への衝動をそこで押し留めて、そのまま両手を、頭上でピタリと止めてみせた。
ゆっくりと、その手を下ろすと、

「ねえ、なっきぃ。一つ、お願いがあるんだけど」

和らいだ表情を早貴へと向けた。

248愛理の休日 322015/04/01(水) 19:38:05.54ID:V1H01LYV0
「え、……何?何?」

突然の、愛理の変化に驚いた早貴が、戸惑い、あっけに取られた表情で訊いた。


「うん、大丈夫だよ愛理。特に、変なものは写ってないから」
「そう?よかった」

みんなでリビングに戻ると、ストーカーが残したカメラからデータを収めたカードを
抜き出した早貴が、ノートパソコンでその中身を確認して愛理に伝えた。
直接、それを見る勇気が無かった愛理は、パソコンを置いた中央のテーブルから少し離れたところで、
それを聞いて安心していた。

「でもこれ、ストーカーさんは、一応ネットに上げる写真、選んでくれてたんだね―。
 この、愛理の顔ったら」

画面に並ぶ愛理の写真を眺めていた早貴が、可笑しそうに言った。
むぅ、笑い事じゃなかったんだぞ!と愛理は少しふくれる。

隣では、これまでの経緯を千聖に説明された舞美が、
「そんな、許せない!」と今さら怒ってくれていた。
愛理は、憤っている舞美の様子が可笑しくて、つい笑ってしまった。
もう終わったからいいんだよ舞美ちゃん。
それに、解決してくれたのは、他ならぬ舞美ちゃん自身なんだから、と。

「でも、本当にいいの?愛理」

早貴が、あらためて“愛理に頼まれたこと”を訊き直した。

「うん、お願い」

249愛理の休日 332015/04/01(水) 19:40:31.03ID:V1H01LYV0
愛理は、早貴を見つめ返すと、よどみない表情で答える。
早貴が「わかった。じゃあ……」と、再びパソコンに向かいマウスを動かしはじめた時に、

「ただいまー」

玄関の扉が開く音と共に、マイの声が聴こえてきた。

「ねえ、みんな、そこにいんのー?」

パタパタしたスリッパの足音が響き、廊下からリビングへと繋がるドアが開くと、

「愛理、いるー?」

マイが、顔を出すなり、真っ先にそう訊いた。

「何?」

愛理が、マイの方を向き答えると、「あ!」マイから少し下がった斜め後ろに、
女の子が立っているのに気が付いた。
早貴が撮った、花火大会の写真で見た、あの黒髪の美少女だ。

「……あ、こんにちは」

愛理と目が合った女の子は、とても恥ずかしそうに、
しかし愛理からは決して視線を逸らさずに言った。
口元から覗いた控え目な八重歯が、とても可愛いと思った。

「ほら、愛理いたでしょ?だって、約束してたもんね」

マイは、後ろを振り向いて言うと、

「友達、連れてきたから紹介するね。昨日、泊めてもらった、同じクラスのトモちゃん」

250愛理の休日 342015/04/03(金) 22:11:37.20ID:hXUgg9v60
「……あ、あの、朋子です。はじめまして」

マイに紹介された女の子は、マイの陰から少し前に歩み出て、今度は、みんなに向かって頭を下げた。
その表情は、ずっと強張っているようで、明らかに緊張しているのがわかった。
常に、ふてぶてしく見えるマイの態度とは対照的で、どういう関係で友達になったんだろうと、
愛理はあらためて不思議に思った。

いや、マイは意外と内弁慶だと前に話していたことがある。もしかしたらマイも、昨夜、
トモちゃんのお家へおじゃました時は、ガチガチに緊張して、こんな感じだったのかもしれないな。
借りてきた猫みたいな、大人しいマイちゃんかあ。
その姿が、なかなか想像できなくて、考えただけで何だか可笑しいな……。
そんなことを、愛理がぼんやりと考えていると、

「実はトモちゃんさあ、愛理の大ファンなんだよ」
「ふうん、そうなんだ。……え、えええ?」

マイが突然に言った言葉に、ふいを突かれて、愛理はおかしな返事をしてしまった。
……いや、そういえば、写真を見た時に、どこかで見たことがあると思っていた。
きっと、自分のライブやイベントに来てくれていた子なんだ。

「……でね、前から、そんなに好きなら会わせてあげるって約束しててさ、
 もし愛理がオフの日が休日だったら、もう前日から泊まりにきなよって言ってたんだけどさ」

マイが話を続ける。

「でも愛理さあ、家の中にまでファンの目があると、
 もしかしたら落ち着かないかなあって思ってさ。もしかして、だけどね」
「あ!」

マイも、きっとストーカーのことを知っていたのだろう。
自分に気を使ってくれた言葉であるのが、愛理にはわかった。

251愛理の休日 352015/04/03(金) 22:16:24.94ID:hXUgg9v60
「……だからさあ、昨日はウチが逆に泊まりに行ってあげたんだよ。
 その代わりに、愛理の小さい頃の写真とか見せてあげるからって」

マイは、そう言うと肩から下げていたトートバッグを床へ下ろした。
ドスンという、重そうな音がした。
トートバッグの上部からは、見覚えがある装丁の背表紙が数冊、頭を覗かせていた。

「何だ、そのアルバム、マイちゃんが持っていってたのー?」
「何だって何よ。もう、愛理のせいで、けっこう重かったんだから」

謎が解けてスッキリした気持ちの方が勝ったので、「何であたしのせいなんだ?」と言い返すのは止めた。
代わりに、愛理が感謝を込めた眼差しで見返すと、マイは(知らないよ)とでもいうように、
口元に笑みを浮かべながら、プイと一度視線を外してみせた。そして、

「でさ、愛理、悪いけど、握手してあげてくれないかな?
 トモちゃん、恥ずかしくって、握手会とか行けないとか言ってるんだよ」

マイが言うと、「ちょっと、マイちゃん」朋子が照れた様子で慌ててマイの肩を揺すった。

「もちろん!」

愛理が、心からの笑顔で両手を出すと、

「……あ、ありがとうございます!」

朋子が、恐る恐る右手を伸ばして、愛理の右手を握った。
愛理は、両手で朋子の掌を覆うと、力強く握り返した。

「あ、あの、わたし、愛理ちゃんの……あ、いや、愛理さんの大ファンで、ずっと応援してます!」
「嬉しい!ありがとう!」

25212015/04/03(金) 22:24:43.58ID:hXUgg9v60
×愛理が、心からの笑顔で両手を出すと、

○愛理は、立ちあがり、心からの笑顔で両手を出すと、

の方がいいね
貼る前に気づけってんだ
あと2〜3レス分で終わります

253愛理の休日 362015/04/17(金) 20:07:05.70ID:CVxvl29C0
愛理が、握手をしながら、素直に感謝を伝えると、

「ありがとうございました!一生の記念になります!」

手を離した後に、朋子は、瞳を潤ませて大きく頭を下げた。

「そんなそんな、大袈裟な」

愛理が、朋子に向けた両手の掌をひらひらと振ると、

「そうだよ。愛理なんて家にいるときは駄洒落ばっか言って、ただのオヤジみたいなもんだから、
 緊張することなんてないよって言ってたのにさ」

マイが、愛理を横目で見ながら、ぞんざいに言い放った。
それを否定をできなかった愛理は「あははぁ……」と力なく笑い、
その場ですとんとソファに腰を落とした。
次にマイが、舞美たち三人を朋子に紹介すると、挨拶もそこそこに、

「そうだ、トモちゃん、夕べはマイちゃんが世話になったんだから、
 今日はうちで晩御飯食べていきなよ。何でも好きなもの作ってあげるから」

千聖が言った。

「肉、肉、マイはお肉がいいな!」
「ねえ、マイちゃんには訊いてないから」
「わたしも、お肉が食べたいなー」
「もう、舞美ちゃんまで!千聖はトモちゃんに訊いてるの!」
「でもさあ、せっかくみんないるんだし、久しぶりにお庭でバーベキューとかしてみようよ」

舞美が言うと、千聖が「えええ?」と、少し不満げな顔をした。

254愛理の休日 372015/04/17(金) 20:09:11.14ID:CVxvl29C0
「ただ焼くだけのバーベキューだと、千聖は自慢の料理の腕が振るえないもんねー」

今度は早貴が、茶化すように言った。

「違うよ!千聖は単にトモちゃんの食べたいものがいいなと思って……」
「私も、バーベキュー好きです!」

朋子が遠慮なく言い、「あはは、そうかあ……」千聖は、気が抜けたように笑うと、

「もう、いいや!みんなで買い物に行って、それぞれ焼いて食べたいものを買おうよ」
「賛成!」

マイが、賛同の声を上げた。

「ちょっと待ってて。汗かいちゃったから、シャワー浴びてから行きたいな」

舞美が、そう言ってリビングを出ると、

「トモちゃん、その間にウチの部屋も見せてあげる。それと、先に家にも連絡しておきなよ」

マイに促されて、朋子は「じゃあ」と愛理たちに会釈をして、マイと一緒にリビングを後にした。
愛理は、急な展開が続いたことに少し戸惑い、そのままソファに座っていると、

「ねえ愛理、気付いてた?」

早貴が、ソファに座っていた愛理に寄り添って話しかけた。

「トモちゃん、部屋に入ってきた時から、ずーっと愛理の方を見てたんだよ」
「うん、知ってた」
「それも、憧れの目でだよ。握手した後なんか、もう感激して涙ぐんでたし」
「あははは、そうだっけ……」

255愛理の休日 382015/04/17(金) 20:11:26.93ID:CVxvl29C0
愛理が、照れ笑いでとぼけていると、

「ほら、愛理のことを見てるのは、ストーカーや、変なアンチばかりじゃないんだよ?
それでも、まだ辞めたいって思ってる?」

早貴が、下から悪戯っぽく愛理の顔を覗きこみ、訊いた。

「え?……あたしは、辞めたいなんて思ってないし、そんなこと一言も言ってないよ?」
「えええ!?だってさっき……」
「なっきぃが、勝手にそう思ってただけだって!だから、違うよって言おうとしたら、
 庭から舞美ちゃんの声が聴こえてきて、そのままになっちゃったけど……」
「でもさ……そうだ、アイドルなんかになりたかった訳じゃないって」
「アイドルなんかとは言ってないよ。それに、あの時は、千聖があんな言い方するから、
 ついムキになって言っちゃっただけだし」

愛理はそこで、前でしゃがんでいた千聖に視線を向けると、

「だってさあ……」

千聖が口を開いた。

「あいつら、あんまり勝手なこと書き込んでるから、読んでて頭にきちゃって」
「え?」

何のことだ?
あいつらって、誰のことだ?
愛理の頭に、新たに疑問が浮かぶ。

「ムカついて、つい『お前らなんかに、愛理の何がわかるんだよ』とか書き込んじゃったのにさ……」

その言葉、どこかで読んだ気がする。……そうだ、たしかさっきネットの掲示板で。

256愛理の休日 392015/04/17(金) 20:14:24.70ID:CVxvl29C0
ということは、どういうことだ?愛理は、思考を巡らせる。

あの書き込みは、たしか昨日の夜中。
寝坊をして、昼過ぎに起きてきた千聖。
それを咎められたときの「昨日の夜は寝れなかったんだから」という言葉。
それじゃあ、もしかして、あれは……。

「……その愛理が『もう辞めたい』なんて言うから、『なんだよ、
 愛理のことを何もわかってなかったのは、結局自分の方だったのか』って腹が立ってきて、
 それでつい怒っちゃって」
「ねえ、待って!あの書き込みしてくれてたの、千聖だったの!?」

愛理が、驚き言うと、

「あーあ、おかげで寝不足だよ。……じゃあ、千聖も準備してくるわ」

千聖は、照れを隠すように、わざとらしいあくびの真似をしてみせると、
そのまま立ち上がり、リビングを出ていってしまった。

「それとさ……」

ドアが閉まり、千聖の姿が消えたのを確認して、早貴が愛理に言った。

「あんな言い方したのは、千聖はオーディションに関して、いろいろ思うことがあるんだよ。
 愛理には隠してるし、絶対に言わないだろうけどね。
 だから、許してあげなよ」
「オーディション……?」

あたしのことを、「オーディションも一発オーケーだったしさ」と言った千聖の、
悔しそうな顔を思い出した。

257愛理の休日 402015/04/17(金) 20:17:15.90ID:CVxvl29C0
「なっきぃ、本当はね……」

ふいに、愛理は話し始めた。

「今まで、もう辞めたいなって、一度も考えたこと無い訳じゃないんだ。
 実際にデビューしてみると、今回みたいに、つらいことだって多いし……」
「……やっぱり、そうなんだ?」
「でも、その度に思い出す風景があるの」
「風景?」
「あのね、ステージの上から見える風景って、すごく特別なんだよ。
 もし辞めたとしても、それを思い出したら、絶対に戻ってきたくなるのがわかってるから。
 だから、辞めたいなんて思わない。もう、何があっても」

愛理は、あらためて自分に言い聞かせるように言った。
だって、あの風景を、千聖もそのうち気に入るのだろうと思えたから。
そして、その時がきたら、自分も決して負けたくないと思ったから。
そこへ、

「お待たせー」

濡れた髪の舞美が、スッキリした表情で戻ってきた。

次に千聖が、外出用のキャップを被り、マイと朋子を連れて再びリビングへ降りてくると、

「なんだよ愛理、まだそんな格好してるの?
さっさと着替えなよ。みんな一緒に行くんだろ?」

ラフな部屋着のままでいた愛理に言った。

「うん、もちろん!」

愛理は、久々の、みんな揃ってのお出かけのために、勢いよく立ち上がった。

258愛理の休日 412015/04/17(金) 20:22:56.03ID:rTxBlUgW0
数ヶ月が過ぎた、ある日。
朝、起きた時には少し肌寒く、長袖の上に軽い上着が欲しくなった頃。
久しぶりに、休みのスケジュールが合って、朝からみんなが揃った、愛理の休日。

愛理たち五人は、以前から約束をしていた新しいアルバム作りのために、
リビング中央のテーブルを囲んでいた。

テーブルの上、広げた新しいアルバムの横には、撮り溜めた写真のデータをプリントアウトしたものや、
コラージュに使うための素材、カラフルなペンなどの筆記具が散らばっている。

写真を見て、思い出話で盛り上がりながら、それを貼り、周りを可愛く彩り、飾る。
それは、とても楽しい作業で、みんなが夢中になった。
午前中から始まった作業は、お昼を食べるために少しの休憩をしたあと、午後にもずっと続けられ、
夕方には、写真とアルバムの残りページは、ほんの僅かになった。

愛理がいなかった、花火大会の写真を貼り終えると、次のページに貼る予定の写真を手にして、

「ねえ愛理、本当にこんなの貼っちゃっていいの?」

早貴が訊いた。
それは、ストーカーのカメラに残っていた、愛理の盗撮写真。
そのカメラを警察に届ける前に、早貴がデータをコピーして保存しておいたもの。

「うん、いいの。あたしの写真だけ少なかったから、これ丁度いいなと思って」

259愛理の休日 終2015/04/17(金) 20:24:13.48ID:rTxBlUgW0
愛理が明るく言うので、「そんなぁ」と言いながらも、みんなが笑い、

「それに、つらかったことも、楽しかったことと同じ思い出だし……、
 これは『いつ、どこで、誰に見られているかわからないから、気を抜くな』って自分への戒め。
 教訓として、残しておきたいと思ったから。
 あたしは、まだまだ今のお仕事、辞めたくないし」

噛み締めるように言う愛理に、みんなが納得したように頷いた。
そして、一連の盗撮写真の横には、早貴があらたに撮った、刀を肩に乗せて構えた
舞美の写真がレイアウトされて、愛理によって『舞美ちゃんのストーカー退治記念日!』という
勇ましい文字が、日付と共に描き込まれた。

次のページは、やはり同じ日、あの夏の日のこと。
遊びにきていた朋子と、みんなで買い物に行き、バーベキューをした時の写真。
食材と一緒に買った花火を、庭で遊んだ時の写真が並んだ。
その中には、早貴が撮ってくれた、愛理と朋子ツーショットがある。
これと同じものを朋子に送ったら、すごく喜んでくれてたっけ。

陽が落ちるのが早くなり、庭に面した大きなガラス戸から、、暮れかけていた陽光が差し込んでくる。
最後のページに、どの写真を貼るかで、みんなの意見は一致していた。

「みんなで撮ったのは、久しぶりだね!」

それを手にして、愛理が言った。
それは、その日に朋子がいたことで実現した、愛理が頼んで庭先で撮影をしてもらったもの。
同じフレーム内に、姉妹が五人が揃って収まった一枚。

「これで、完成ー!」

写真を受け取り、舞美がそれを貼り終えると、みんなが、それぞれに歓びの声を上げた。
写真の中と同じ、五つの笑顔が、温かなオレンジ色に染まっていた。

26012015/04/17(金) 20:29:18.23ID:rTxBlUgW0
自分が℃好きになった時には8人いて
このスレを始めたときもスレタイ通り7人いた訳で
我武者ライフの歌詞がすごく沁みます

な訳で次もやります
どこで書くかわからないけど
『まいみぃのアルバム』か マイ主役+早貴千聖との旅モノで
ではまた

261ねぇ、名乗って2015/04/17(金) 22:23:22.31ID:orwyfp9P0

262ねぇ、名乗って2015/04/17(金) 22:43:58.55ID:tTcIK1RJ0

263ねぇ、名乗って2015/08/31(月) 21:51:08.30ID:iTfdPNc20
age

26412015/09/19(土) 19:35:19.14ID:ZJqiYCBB0
「どうで誰も読んでないにのに」とか思っても半年も経つと次が書きたくなる不思議
タイトルは『マイ・ホーム』
大筋は出来てるので細部をもうちょっと練ってから始めます
例によってまずは逃げられないように宣言してから

265ねぇ、名乗って2015/09/26(土) 16:40:13.23ID:Sapq8SiS0
久し振りに覗きに来たら新作予告キテた!
楽しみに待ってまーす

266マイ・ホーム 12015/10/01(木) 19:27:53.12ID:BbG/jy/K0
天井が総ガラス張りの広大なドームを通り抜け、木製の、鼓をイメージして作られたという巨大な
「鼓門」をくぐって外へ出たマイを出迎えたのは、春だというのに何だか重苦しい、灰色の空模様だった。

「ほら、舞美ちゃんが来るっていうから、お天気がさあ……」

今日の、自分の冴えない気持ちを空に見透かされたようで、何だか面白くないマイは、
つい雨女と呼ばれる舞美に当たってしまった。

「何よぉ、曇ってるだけで、まだ降ってないじゃない」

舞美が、困惑した表情で答えると、

「あのね、北陸の空って、もともと曇りと雨が多いんだって。
だから、晴れの日とかすごく貴重なんだよ」

早貴が、舞美をフォローするように言った。
今回の旅行において、自らガイド役を引き受けた(という体で、実はマイにガイドを押し付けられた)
早貴は、下調べしておいた成果の一つを披露する事ができて御満悦の表情だ。
それがまた、マイには面白くなくて、「ふーん」と口を尖らせて横を向き聞いていないフリをする。

「それに、舞美ちゃん前に来たときは晴れてたんでしょ?」

スマホの画面に地図を表示させて、さらにはガイドブックを二冊も小脇に挟んだ早貴が、
あらためて舞美に訊いた。

「そうだよ、撮影の間中ずっと晴れてたんだよ!ねえそれってスゴくない?」

以前に、写真集の撮影で金沢を訪れたことのある舞美が、晴れていたことを、
さも偉業を達成したかのように語るので、それが可笑しくて、

「それくらい、別に普通のことだってば」

267マイ・ホーム 22015/10/01(木) 19:29:04.26ID:BbG/jy/K0
不機嫌だったはずのマイも、つい顔をほころばせながらつっこんだ。

「じゃあ、まず記念に駅前で一枚撮ろうよ」

記録係としての役割は、こちらは強制されずに自ら志願した写真好きの早貴が、
スマホの画面を地図からカメラに切り替えて、待望の製品だった自撮り棒をセットする。

「チーズ!」

駅をバックに、ピースサインで一枚、
三人で写り具合を確認して、「まあまあじゃん」とその出来に満足して言う。

「舞美ちゃん、じゃあここも二回目?」

早貴が、スマホの画面から顔を上げて訊いた。

「ううん、駅は初めて。前に来たときは飛行機で空港だったから」

そう言うと、舞美も顔を上げて、あらためて駅を仰ぎ見た。
2015年、春。
この春に開通したばかりの北陸新幹線で、マイたち三人は金沢市を訪れていた。
朝、早くに家を出て、金沢駅に到着したのは正午過ぎ。
駅前の広場は、マイたちと同じ、新幹線に乗って来たとおぼしき観光客たちで溢れかえっていた。

「でもさあ、どうせなら日帰りじゃなくて一泊したかったよねー。
そしたら、観光だっていっぱいできて、温泉にも泊まって、カニとかたくさん食べれてさ……」

新幹線が開通したことで、日帰りが可能になり実現した今回の三人旅だったが、
それに不満だったマイが、また口を尖らせて言った。

「また、それを言うー。まあ、いいじゃん!」

268マイ・ホーム 32015/10/01(木) 19:31:26.80ID:BbG/jy/K0
そもそも、今回の旅行を日帰りにした原因の舞美が、あっけらかんと言い放った。
マイと早貴の二人だけなら一泊二日の旅行も可能だったが、
マイの金沢行きを知った舞美が「いいなあ金沢、一緒に行きたい!」と計画に割り込んできたこと、
しかし忙しい舞美のスケジュールが一日分しか空けられなかったことで、今回は日帰りの、
慌ただしい強行スケジュールとなってしまった。

しかも、マイにとってこの旅には、本来の目的であり、訪れなければならない“大事な場所”があったので、
そのための時間を差し引くと、観光などの時間はもっと短くなってしまう。

「ご飯だって、全部わたしが美味しいものを奢るからさ」

舞美が、マイをなだめるように言うと、

「海鮮!海鮮!もう三食とも海の幸だからね!」

マイが、少し機嫌を直して主張をした。

「えええ、全部海鮮!?お肉も食べようよ?
それに三食って、朝はもう家で食べてきてるから、二食でしょ」

早貴が、あきれた様子で言うと、

「……じゃあ、明日の朝にお肉!帰ってから、朝ご飯でステーキね」
「朝からステーキ!?それもちょっと……」
「いいじゃん!そもそも今回の旅行は、マイが主役なんだからね」

早貴が、(それを言われると仕方ない)とでもいうように「はいはい」と頷き、

「わたしは、朝からステーキでも全然平気だよ?」

舞美が、(何がおかしいの?)とでもいうように、とぼけた笑顔を見せた。

269ねぇ、名乗って2016/01/21(木) 12:16:00.69ID:HslrS2kcO
>>1
もう6年か

270マイ・ホーム 42016/02/07(日) 16:26:45.28ID:bt7zscPg0
「舞美ちゃんは、特別!」

早貴が強く言い、みんな笑っていたところで、

「あの……」

マイたちは、知らない男性に声を掛けられた。
振り向くと、マイと同じ年頃の、三人組の男の子たちがいて、その中の一人が話しかけてきたようだ。
その子は、緊張した面持ちで立っていた。

(……もう、ちょっと有名になったからって、いきなりこれかよ)

マイは、柄にもない、慣れない愛想笑いをその男の子に向けると、歩み寄ってきた男の子は、
マイの前を通り過ぎ、舞美の前で立ち止まった。

「……舞美さんですよね?ぼく、ファンなんです!」
「え、あ、ああ、ありがとうございます!」

不意を突かれた舞美が、それでも瞬時に笑顔を見せて男の子に応えている横で、
自分の前を素通りをされたマイの呆気にとられた表情を、早貴がニヤニヤしながら眺めていた。
しまった、見られてた!
恥ずかしさで、マイの顔が瞬時に熱くなる。

「ねえ、一度テレビに出たくらいじゃ、まだまだ舞美ちゃんには敵わないよ」

早貴が、笑いをこらえながら言った。

「ふーんだ。そんなことは、わかってるし!」

マイは、赤い顔をして強がって答える。

271マイ・ホーム 52016/02/07(日) 16:29:52.17ID:bt7zscPg0
きっかけは、些細なこと。
みんながそれぞれ仕事を初めたことで
(舞美は女優、愛理は歌手、早貴は雑誌の読者モデル、千聖までもがいくつも受けていた
芸能オーデションの一つに受かり、それからバタバタと忙しそうになってしまった)、
それぞれに帰りも遅くなり、家で一人になる時間が増えてしまったマイは、
ただただ暇潰しの気まぐれで生放送のネット配信を始めた。

それが、続けているうちに何だか話題になり
(話題になった理由が『派手な外見の勝ち気そうな女子が、
見た目に反してヘタレで可愛い』というのがマイには気に入らなかったが)、
テレビの人気バラエティ番組で取り上げられたのが、先月の事。

それを見ていた芸能事務所の一つが、マイとタレント契約したいと申し出て話は進み、
今のマイはデビューを控えたタレント候補生となっていた。

「……でも、マイだってデビューしたらチョー有名になって、写真集だって負けないくらい何冊も出して、
いっぱい稼いでやるんだからね」

マイが言うと、

「それに、見てる人は、ちゃーんと見てくれてるんだから!」

上着のポケットから、一通の手紙を取り出すと、それをヒラヒラと振りかざしてみせた。
テレビへの出演後、局の番組宛に届けられたマイへの一通の手紙は、マイにとってとても大切なもので、
金沢市内の住所と、今日、これから訪ねる人物の名前が書かれている。

「……うん、そうだね」

早貴が小さく頷くと、マイは勝ち誇った表情で手紙をポケットへと仕舞った。

「じゃあ、行こうか。約束の時間まで、観光するんでしょ?」

272マイ・ホーム 62016/02/07(日) 16:31:17.91ID:bt7zscPg0
早貴が言うと、マイは頷き、「舞美ちゃん」プライベートだからと断りきれずに、
男の子たち相手に即席の握手会を開いていた優しい舞美に声を掛けた。

男の子たちと別れた三人は、「まずは美味しいお昼ごはんを食べよう」と、ガイド役である早貴の案内で、
金沢駅から歩いていける距離の近江町(おおみちょう)市場へと向かった。

「ねえ、その前に喉も渇いちゃった」

途中でマイが、新幹線の中で飲み干して空になったペットボトルを取り出して言った。
マイの視線の先には、一台の自販機があった。

「いいよ、何飲みたい?」

舞美が、自販機の前に立ち、自分の財布を取り出した。

「いいよいいよ舞美ちゃん、さっきも買ってもらったのに」

マイは自分の財布を出す素振りを見せたが、すぐに「そぉお?」とニッコリ笑って財布を仕舞った。
しかし、

「あれ?どうしよう、大きいお札しか無いや」

財布の中身を確認して舞美が言うと、マイの視線はすぐに早貴へと向かい、その顔を凝視した。

「……ねえ、何でよ!?マイちゃん、今、自分で買うつもりだったんじゃないの?」
「あー、実はマイお財布忘れちゃったんだ」

マイが白々しく言った。

「さっき、マイちゃんのお財布、チラッと見えたぁ!……まあいいよ。
今日はマイちゃんのための旅行だしだし、飲み物くらいおごってあげるから」

273ねぇ、名乗って2016/02/07(日) 16:52:13.41ID:bt7zscPg0
>旅行だしだし

ここミスですね

○旅行だし

毎回読み直して書き直した箇所で貼りミスしてる
20レス〜30レス分内で完結できればなあと思ってます

274ねぇ、名乗って2016/03/08(火) 02:48:53.23ID:hO1O19800
ここが最古か

275ねぇ、名乗って2016/03/08(火) 02:50:08.52ID:ADiPSv2j0
せやな

276ねぇ、名乗って2016/12/30(金) 19:18:40.62ID:sDeyTWqL0
狼から来ました

277ねぇ、名乗って2017/04/13(木) 20:25:54.42ID:+CiZ7MvF0
7年前は七姉妹だったのか

278ねぇ、名乗って2017/04/13(木) 20:34:58.28ID:2KKsCHT2O
狼から来たってどうゆう事?

279ねぇ、名乗って2017/07/04(火) 13:05:40.90ID:YDJbwVwU0
ここが羊最古スレか

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